生産技術って大変なんじゃないの?
そんな疑問に,生産技術職の筆者がお答えします!
それではレッツゴー!
大変なこと
覚える事,調査する事が多すぎる
生産技術は,製品を量産するための生産ラインをつくる仕事です.生産ラインを工場へ導入し,定めた生産性(良品率,稼働率)を維持しながら生産活動できる状態にするためには,膨大な知識・スキル,プロジェクトマネジメント能力が必要になります.それだけはなく,必要な予算を積算し,事業として成立するかどうか検証するような経営的な業務もしなければなりません.
また様々な場面で発生する問題・課題に対しても,複数の対応案があるのであれば,各案のメリット・デメリットを比較し検証する必要があります.この比較表を作成するだけでも,かなり工数がかかります.特許調査が必要なものがあれば特許も自身で調べます.
機械設計,電気設計,制御設計,生産管理(システム)設計と,設計業務だけでもいろいろありますが,担当はそれぞれ分かれる事が多いと思います.機械担当,電気制御担当,システム担当といった具合にです.しかしながら,各担当者が自分の範囲だけできていれば良いわけではありません.生産設備は,機械,制御,システムそれぞれ連動して運用されるものです.自分の担当とは異なる部分においても重要な事は知っておく必要があり,知っているから各担当者で議論ができるものです.そして各担当者が共通して把握しておかなければならない事は,製造する製品の特性と,プロセスです.対象ワーク(製品になる前の加工品)にどのような物理・化学的処理を,どのようなスペックになるように,どのような方法でするのかを知っていないと,機械,電気,システムがそもそも設計できないからです.
筆者は,生産技術に携わって10年近くになりますが,同じプロセス,同じ設備を2回以上担当したことはありません.毎回異なる内容のため,技術面では常に新しく調べて覚えるというようなことをしています.仕事の進め方などは経験を積んで慣れてきますが,技術面は毎回新しいものに出会うという感じです.
新しい知識をどんどん自分の中に取り込んでいくことや,比較検証してベストを選びたいというのが好きな方は,生産技術職は合っているように思います.
プロジェクトマネジメント力が不足している時
プロジェクトマネジメントというとすごそうな印象を受けますが,自分がどんな役割になっても,その役割を果たすための管理(マネジメント)はあるはずです.
国内外への出張が多い,期間が長い時
設備投資プロジェクトに携わると,出張がかなり多いです.どのような生産ラインの構成にするか,設備はどのようなものを,どの設備メーカーから調達(発注)するかの段階から,国内外の設備メーカーをあたります.発注した後も,設備製作状況をチェックするために,立ち合い確認というものがあり,発注している全設備メーカーへ行脚します.国内ツアー,海外ツアーみたいな形で渡り歩きます.
そして一番大変なのが,SV(スーパーヴァイザー)出張です.調達設備を工場へ据え付けて,問題なく動くかどうか確認する試運転をして,工場側へ引き渡します.担当する設備次第ですが,大規模な工事を伴うものであれば長期間の出張になりますし,マシニングセンターのように加工機をスタンドアロンで据え付けるものであれば,数週間~1カ月程度で終わります.
海外工場へ導入する案件だと,海外に長期出張することなり,日本と環境の異なるところで生活することが苦痛に感じる方は辛いと思います.筆者は,このような出張や海外生活は楽しんでいるし,そういう業務に興味もあったことから生産技術の職に就いている面もあります.
筆者が大変だなと感じることは,SV出張が長いということです.独身時代は,どれだけ長期間行っても何も感じなかったですが(むしろ旅行では経験できないローカルな海外生活できることに興味を見出していた),ライフステージが変わり,結婚,こどもを持つと,長期SVは独身時代と打って変わって,『勘弁してよー』という気持ちになります.かと言って,SV出張しない生産技術職は会社に評価されないことになるので,わがままを言うつもりはないですが,短期間を複数担当でリレー形式にするなど,これからの生産技術のあり方も考え行く必要があると思っています.
体制/マンパワーが破綻している時
これはどの会社でもありがちだと思いますが,設備投資プロジェクトが発足する際に,計画したメンバーが昔の気合と根性系のメンバー(リーダクラスの50歳代)だと,必要な工数,人員は,過去の似たような案件からコピーしてきて,おおざっぱに決めることがあります.このような場合,過去の案件も気合と根性系の設定になっているため,新しいプロジェクトもそうなります.当然,人員足りず,業務が正常に回りません.長時間残業,土日出勤し対応することになりますが,プライベートがほぼなくなります.当時はプライベートは一切考えず仕事ばかりしてましたが,今思えば,やはり体制構築時点から適切な設定ができていないのだと思っています.
最近は,リーダー層もマネジメントをしっかり考えるようになり気合と根性の体制は無なくなりつつありますが,それでも人材がいないと,どうしても,『なんとか回してほしい』となり,破綻状態に近い状態にあることもあります.
今後も人口減少が叫ばれる中,人材育成も含めた計画的な人員リソース確保が必須になるとともに,適切な工数を管理するための仕組み(ツール,システム)が必須と思います.
新型コロナなど外部環境要因で予定通り進まない時でも納期必達な時
これは製品の納品先であるお客様との交渉もあるかと思いますが,基本的に,納期を後ろ倒しにするということは滅多にありません.2020年~新型コロナが流行しましたが,そのため物流が停止したり,出社が制限されたり等で,予定通り設備製作が進まない事がありました.設備製作は遅れても,予定通り工場には据え付ける,据え付けならが遅れた分をリカバリーする,など,なんとしてでも納期を守るということです.そして遅れた分を取り戻す方法というのは,人員を増やし,2交代24時間で対応することです.これは昼勤帯であっても夜勤帯であっても,体力面,メンタル面かなり消費します.
連休が生産技術の出番な時
これもあるあると思いますが,工場勤務の場合,生産ラインが生産計画上停止するタイミング=設備改造タイミング,メンテナンスタイミングとなります.ゴールデンウイークなど長期連休時は,絶好の改造日です.世の中が休んでいる時に働く必要があり,家族や他の会社に勤めている友人と休みを合わせづらい面があります.
ポジティブに捉えると,ゴールデンウイーク働く代わりに,ゴールデンウイーク並みの連休を別で取るのが一般的と思いますが(忙しいと結局休みとれない問題もあるあるですが),カレンダーの連休とは別のタイミングで,連休を取るため,旅行や行楽地は混雑なく楽しむことができます.
設備不具合・トラブル対応時
生産している生産ラインは,基本的には24時間365日生産することが前提ですが,ノートラブルでずっと動いている訳ではありません.現場ではたびたびトラブルが発生しており,その都度対応することで,生産への影響を最小限に留めて、動かしているような状況である場合多いです.
ちょっとした事が原因でも,例えばセンサーがうまく反応しない,などでも,設備は停止し,生産は停止します.
〇〇設備が止まって動かないんだけど!今すぐ来て!
というような感じで製造担当者から電話が掛かってきます.現象を聞いて(現象を正確に話せる人も貴重だが,,,),なんとなく原因を推測します.そんな中で,現場に向かい状況を確認します.どこでどなった時にどう止まったか,その直前に何か設備操作したか,などをより詳しい内容をヒアリングします.センサーなのか,制御プログラムバグなのか,
まずはPLCにPCをつないで,制御プログラムをリアルタイムモニタし,プログラムのどこで、処理が止まっているかを確認します.止めているプログラム条件をチェックし,その部分が設備のどこかを確認します.センサー故障だったら,センサーの交換作業をします.
もし原因が特定できなかった場合は,制御プログラム上の問題の場合のみですが,原因解決まではしないが,暫定対応として,無理やり動くようにして一旦は対応を完了します.
このようにトラブルが発生した場合は,暫定対応によせ,なんにせよ動くようにできるまで対応は完了できません.それは生産停止したまま放置することはあり得ないからです.
夜・帰宅後・休日の呼び出し時
これはつらい,,,帰宅しようとした矢先の電話,,,休日中の呼び出し電話,,,設備トラブル対応をします.
生産技術単体では離職率が高い
会社全体としては,離職率は少ないところであっても,生産技術の部署だけで見れば以外と高いのではないでしょうか?筆者の会社でも,生産技術の離職率は高いです.よく同期の歩留まりは?なんて聞くことありますが,例えば同期10人いた場合,5人離職している代もあります.
理由は様々です.
- 担当している設備がうまく立ち上がらず炎上しているが,上司等から適切なフォローを得られず,一人で抱え込んで嫌になったケース
- 人間関係がうまくいかず合わないと感じてしまったケース
- 家庭の事情で,海外駐在や長期SV出張に対応できなくなり,会社で評価されなくなると感じてしまったケース
- 家庭優先のため,海外出張がない業種を希望するケース
- 仕事の割り振りが思った通りでなかったケース
人間関係
これが一番大変かもしれません.折衝能力が問われます(これだけでは片付けられないものもあるかと思いますが).生産技術は,関わる部署が多く,それぞれの部署とは利害関係があります.製造部署は,使い勝手のよい設備にしたい,あの機能,この機能も付けて,ここは自動化してほしい,など言っってきますし,情報システム部署は,〇〇があるべき姿だよねっと言ってきたりします.生産技術は,様々な意見がある中で,最初に取り決めたコンセプト,ゴール,予算,スケジュールを守って目的達成する必要があります.どのような進め方をするにしても,関係者への合理的な説明と合意を取り付けて進めなければ,後から,聞いてない,なんでそうなっているだ,と炎上し,人間関係も良くない方向に行ってしまいます.
生産技術の働き方に革新を起こす必要がある
生産技術は,生産・製造するためのコアな部分を担っているが故に,業務が大変なのは言うまでもありません.役割としても,やりがいは非常に感じますが,『大変だ』の部分を解消できれば,生産技術という職種がより魅力的になると思います.
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