生産技術って負け組なの?勝ち組なの?どっちなの?
製造業には生産技術という職種がありますが,研究職など他の職種と比べて業務負荷や成長度合い,キャリアパスはどう違うんだろう?
巷では,よく生産技術は負け組と聞くけど実際はどうなんだろうと気になりますよね?
生産技術に10年以上携わっている私が,生産技術の良いところ,良くないところの実例をご紹介しますので,生産技術のキャリアを描くための参考にしてみてください.
それではレッツゴー!
負け組なの?
工場勤務の3K(きつい,きたない,きけん)イメージ
製造業は,製品を製造する工場を持っています.キーエンスのように設計だけ自社で行い,製造は外部へ委託するファブレスメーカーもありますが,自社工場で製造することが大半です.工場は広大な土地を必要としますので田舎・僻地に建設され,物流も考えると〇〇工業地帯と呼ばれるエリアに建てられます.
生産技術は,現場がある工場での勤務もあります.工場の仕事のイメージと言えば,ヘルメットをかぶって,肉体労働するイメージがあり,体力的にきついと思われがちです.生産現場ですから,設備が出すモータ音や,機械音などがずっと鳴っていますし,メンテナンス時の設備への給油で汚れたりします.また,時々ニュースで聞くような機械に挟まれて負傷・死亡するような事故もリスクとしてあり危険なイメージもあります.また工場というワードは,ルーティンな業務と思われることが多く,レベルの高いことはしていないというイメージを持たれることがあります.
このような事から工場勤務は負け組と思われることがあります.
研究開発に比べて軽視されているイメージ
大学の時,研究できる人=頭がよいという認識があったと思います.会社に入ってもこのイメージはそのまま引き継がれます.研究開発に採用された人はやっぱ頭いいのだろうな,高度なことをやるのだろうなというところです.所謂ホワイトカラー的なイメージが強いと思われます.
一方で,生産技術は現場寄りで,ブルーカラー的なイメージが強いと思われます.よれもあり,製造業ではよく下図のような序列になっていることが多いと思われます.
- 研究開発
- 生産技術
出世できないイメージ
工場勤務のイメージや研究開発より軽視されているというイメージから,社内でも出世できないとイメージを持たれることもあります.
休日出勤,連休がないイメージ
生産技術は,工場で稼働中の設備を管理する機能と,新しい生産ライン・工場を建設する機能とがあります.
まず,新しい生産ラインを建設する業務の場合,設計・製作段階では,通常のカレンダー通り休みはありますが,設備が出来上がってきて,いざ工場へ据え付けする時に,大型連休時も据え付け試運転対応をする必要があります.
次に,工場で稼働中の設備を管理する業務の場合,既存設備を改善・改造するタイミングが,生産が止まる連休等を狙って改造します.従って,生産がない時こそ,生産技術がやりたいことができる環境になるわけです.
工場勤務の業務になると確かに連休がないことが多いです.ただしそれは休み自体がなくなるのではなくタイミングをずらして別の日に連休をとってバランスします.
勝ち組なの?
会社の大規模な設備投資のど真ん中に携われる
新しい工場の建設や,新しい生産ラインの建設は,会社にとって次の利益を得る源泉になります.当然ながら,工場やラインを建設することは投資になるため,これだけの需要があり,いくらで販売すれば,これだけの投資をして,何年で回収する,というような投資ストーリーが考えられています.
まさにビジネスのど真ん中です
生産技術はこの段階から関わっていき,プロジェクト化されます.そしてそれをど真ん中でコントロール・実行するのも生産技術になります.
このように会社の将来を左右するような業務に携われるのが生産技術です.
国内外問わずグローバルに仕事ができる
一時は”日本国内に仕事はない”と言われることもあったかと思いますが,サプライチェーン含め世界のあらゆる国と仕事をすることが求められています.実際に新しい工場をつくるとなると海外というケースが少なくありません.そのような業務が当たり前にあるため,若い時期から海外向けの案件を担当することができ,グローバルに活躍することができます.
旅行で行くような観光地ではないですが,現地ローカルの衣食住文化に触れることもできます.
投資判断の材料をつくるため,経営者視点も養われる
新しい生産ライン・工場の建設は会社にとって次の収益を得るための投資です.投資ならば当然,投資費用を回収し,利益が継続的に得られる状態をつくる必要があります.
かかる費用は,建屋費,ユーティリティ費用,工事費,設備費用,システム費用,人件費など様々ありますが,お金面も含めて目的達成するための,ライン構成やレイアウト,人員体制等を決める必要があります.ビジネスとしてどうすれば成立するか,最適解を出すのも生産技術の仕事です.
このような業務もあるため,生産技術の優秀メンバー(幹部・リーダクラス等)は,事業を担っている事業部門など,別部門の幹部を担当するケースも少なくありません.
プロジェクト管理が得意になるため,出世しやすい
先ほどの通り,プロジェクトができる,投資判断もできる,ということで,将来的には生産技術のみならず別部門の幹部にまで活躍範囲は広がります.
生産技術に重きを置いている会社であれば,社長になる方もいます.
仕事の成果が目に見える
生産技術の仕事として,新しい生産ライン建設や工場建設がありますが,成果は非常に分かりやすいです.新しい生産ラインを据え付けて,予定通りに生産開始し,稼働率,歩留まり(良品率)が達成できれば目的達成となります.生産ラインができて,生産できるている様は,誰が見ても分かります.
製造業に携わっていなければ,工場つくる,生産ラインつくるというのは当たり前にできることと考えられがちですが,計画を練るところから量産開始できるまで辿り着くには本当に大変です.(同じ生産ラインは2本目,3本目をコピーしてつくる場合であっても,1本目つくる場合よりも心配ごとは少ないですが,大変なことは変わりありません)
プロジェクト進行中にはあらゆる課題が発生しますから,関係者で都度解決策を練り対応します.予算超過や工程遅延が発生しないように,やり方もその時その時で状況に合わせて臨機応変に対応します.各メンバーがそれぞれの役割を果たし目的を達成します.そして成果が形として見える.
これも生産技術の魅力です.
長期連休をずらせるため混雑に巻き込まれない
負け組欄で書いた理由を逆手にとって考えるということです.2023年のゴールデンウィークの様子がニュース等で報道されていますが,高速道路の渋滞,新幹線の待ち時間,行楽地での待ち時間などコロナ禍明けの大型連休ということもあり,どこも混雑がすさまじいです.そして飛行機,宿泊ホテル,食事などの料金も旅行シーズン価格になっています(物価高の影響もありますが).
旅行シーズンに旅行に行くことも旅行の醍醐味だという方はこの考え方は合わないと思いますが,カレンダー上の連休中は仕事をして,その後の平日に連休を取得すれば,混雑回避,通常料金,予約容易等いい面がたくさんあります.
旅行に行く友人や家族との予定が合わせられるのであれば,逆にコスパのよい働き方とも言えます.
結局どっちなの?
詰まるところ個人それぞれが何に重きを置いて働くか,何に価値を見出しいているかだと思います.他の職種であっても同様です.
筆者の場合は以下を重視していたため,生産技術を希望していました.
- 設備設備のような大型なプラントをつくることに興味があった
- 設備投資という会社が成長するための直接的な活動に携わりたい
- 実際の損益を考える視点
- 事業貢献している実感が得やすい
- 理論だけでなく実用的なスキルも身に付けたい
- 海外含めへ様々なところへ飛び回りたい
- 要件や設計業務は自分のアイディアを,比較的自由に反映させたい
又、タイトルで書いている”勝ち組”,”負け組ですが,そもそも職種によって”勝ち組”だとか”負け組”だとかを気にしているのは,就職活動している学生くらいになものです.実際に働き始めれば,全ての職種が重要なものだと認識に変わりますし,それぞれ得意分野,不得意分野があるのでお互いを尊重し合うようになります.
敢えて”負け組”は何かを書くとすれば,自分が重きを置いていることが,働いている会社にはない場合かと思いますが,就職活動する中で,面接を通して会社側とすり合わせしてアンマッチを起こさないようにすることが大事です.
それでも負け組と思ってしまう時は...
それでもどうしても,納得がいかないときは環境を変えた方がよいと考えます.
つまり,転職です.
モチベーション高く働けなければ,高いパフォーマンスが出せない,成長も止まる,会社からの評価も上がらない,という悪循環に陥ります.
改めて,自分にとって何が大事なのか?を整理して,職種を考え直しましょう.
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